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映画「アメリカン・ビューティー」レビュー

狂気と正気の狭間にある美

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映画の概要

アカデミー賞受賞作で、サム・メンデス監督、ケビン・スペイシー主演、そして、ドラマ「シックス・フィート・アンダー」のアランボール脚本作品。
好きすぎてもう5回近く見直してしまった。
描かれているのは、一言でいうと狂気の世界。

 

クレイジーなキャラクターたち

美しい娘の親友に気に入られようと、本気で筋力トレーニングに励む主人公、レスター。

そんな彼への軽蔑の気持ちをあらわにしている、ティーンエイジャーの一人娘、ジェーン。
仕事の不動産業に全身全霊をかけ、業績アップのためなら、不動産王に取り入ろうと、不倫も厭わない妻、キャロライン。
元軍人で、厳格な父親に、表面上は柔順でありながら、影でマリファナを密売している、ビデオ撮影が趣味の隣人、リッキー。
男子の視線を集めることに快感を覚え、退屈や凡庸であることを何よりも嫌い、将来はモデルになれると本気で思い込んでいる、ジェーンの親友、アンジェラ。

一見、登場人物の誰もがまともでなく、気が狂っているように思える。
しかしそのうちに彼らがけして特別な人間なのではなく、ごく普通の一般市民である私たちの、願望や妄想や思考なんかが、誇張されて象徴的に具現化されているだけだと気付かされる。

 

醜くも美しい世界

この映画は「シックス・フィート・アンダー」同様、全編がブラックユーモアに満ちている。
しかし最後に何故かさわやかな感動を覚えるのは、作品の主題が、この世界の「ビューティー(美)」であるためと思う。


「美」とは何も特別なものをさすのではない。
例えばリッキーは、自分の撮ったフィルムにおさめられたポリ袋が風に舞う映像を「美」と称した。
そうした何気ない日常の光景の数々が「美」の結集であり、生きていくということは、この世界に満ちあふれた、数々の「美」を見出していくことである
――そんな普段の生活に埋没してしまいがちな当たり前の日常が、正気と狂気の狭間の、洗練された美の世界の一環として描かれているところ。


それがこの映画が見る者を魅了してやまない、独特の魅力なのだと思う

 

Written by ユカ@コーヒー