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映画「マンチェスター・バイ・ザ・シー」レビュー(ネタばれあり)

絶望の先にあるもの

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映画概要

マット・デイモンプロデュース、ケナス・ローガン監督、ケイシー・アフレック主演。

アカデミー賞ゴールデングローブ賞などをはじめ、2016年から2017年にわたり数々の賞を総なめした話題作。

このところ自分の中でヒットがなかったが、これは久々に当たりのミニシアター系映画だ。

ちなみにこの話の舞台の「マンチェスター・バイ・ザ・シー」はアメリカのマサチューセッツ州にある小規模都市で、イギリスのマンチェスターとは関係がないらしい。

あらすじ

主人公、リー・チャンドラーは、ボストンで家の配管工事などを行う便利屋として生計を立てていた。

ある日兄のジョーが心臓発作で病院に運ばれ、そのまま亡くなってしまう。

ジョーには一人息子のパトリックがおり、その後見人に選ばれたのがリーだった。

その出来事を期に、故郷のマンチェスター・バイ・ザ・シーに戻ったジョーは、パトリックと同居を始めるが・・・。

 人生を変えてしまう出来事

以前のリーは交友関係も広く社交的で明るい性格、子沢山の一家の主だった。

妻とも「もう一人子供を作ろうか」などと話していた矢先、リーの不始末で、家と子供たちを火事で亡くしてしまう。

一夜にして持っていた大切なものすべてを亡くしてしまったリー。

それも全部自分の責任ということで、抱えきれないほどの悲しみや怒り、絶望を向ける矛先がない。

それゆえ、それ以降のリーは、口数が少なく、短気で喧嘩早い性格に変わってしまう。

リーの人生の時間は、その時点で止まってしまい、その後の人生も立ち行かなくなってしまったようだ。

出発、そして再生

しかし兄の死をきっかけに、マンチェスター・バイ・ザ・シーに戻ったリーは、甥のパトリックと同居を始める。

パトリックは高校生で、バンドを組んでおり、彼女が二人もいるという絵に描いたようなリア充青年。

そんなパトリックとリーは、最初のうちはぶつかり合ってばかりいたが、話が進むにつれ、次第に心の交流が芽生え、物語の最後には打ち解け合うようになる。

 リーが最初にいたボストンも、マンチェスター・バイ・ザ・シーも、季節は冬で、雪がたくさん積もっており、まるでリーの心中の様子を表しているかのようだったが、

ストーリーの最後は春であり、雪解けとともに、リーの心の傷が少しずつ癒えていく様子が丁寧な描写で描かれている。

 

総評

決して派手な映画ではないし、最後もめちゃめちゃハッピーエンドだというわけではなく、淡々とした感じで終わる。

しかし絶望を抱えたままでも、何の希望もなくても、生きているということ自体が素晴らしいことなのだとしみじみ思えた。

ミニシアター系の映画にありがちな意味不明な描写もないし、ストーリーもこぎれいにまとまっている。

しかし決して話の展開が読めてしまうとか、ありきたりな王道ものというわけではない。

わかりやすさやポップさはなくとも、じんわりと心にしみる良作を探しているという人には、本当におすすめの一作だ。

 


アカデミー主演男優賞受賞『マンチェスター・バイ・ザ・シー』予告編

Written by ユカ@コーヒー