話題作「天才を殺す凡人」を読んだ――誰でも天才?!
最初に
この本を手に取ってまず思ったこと。すごく意地悪な言い方すると、「ふーん、自分のことを『天才』と思い込んでる、意識高い系が読む本ね」。だって意識の低い「凡人」はこの手の本はまず手に取らないだろうし、かといって、世の中の天才の割合に対して、この本の読者数は多すぎる、と言った具合である。
というわけで、私自身も同じく、「『もしかしたら自分も天才かもしれない』と、人生で何度か思ったことのある意識高い系」というレッテルを貼られるのを承知で、この本を紹介させていただく。
世の中の人間は、大体三種類に分けられる
ちなみにこの本の定義によると、世の中の人間は三種類に分けられるそうである。
- 天才・・・独創的な考えや着眼点を持ち、人々が思いつかないプロセスで物事を進められる人。創造性は高いが、再現性、共感性は弱い。
- 秀才・・・論理的に物事を考え、システムや数字、秩序を大事にし、堅実に物事を進められる人。再現性が高いが、創造性、共感性は弱い。
- 凡人・・・感情やその場の空気を敏感に読み、相手の反応を予測しながら動ける人。共感性はあるが、再現性、創造性はない。
ここまで気づいて、私、ユカはハッと気づいた!
「やばい、私、どれにも当てはまってないじゃねーか」
まず百歩譲って、独創的な考え、着眼点に関しては、そこそこはあるとしても、しかし人々が思いつかないプロセスで物事を進められる気がしない。
次に、ある程度論理的な考え方はするが、ガチガチの論理思考ではない。秩序も大切にしないし、何より堅実に物事を進められない。(これは一番当てはまらない気がした)。
そして感情やその場の空気には敏感なものの、相手の反応を予測しながら動けない・・・。
そこで思わずこの本につっこんでしまった。
「『変人・奇人』とか、『ダメ人間』とか、どれにもあてはまらない、『その他』て項目はないんか!もしあったら、絶対当てはまる自信あるんだけど」
・・・。
残念ながら、少なくともこの本にはそんな項目はないようである。私は、自分がいったいどれなのか分からないまま、もやもやとした気持ちを抱えて読み進めていった。
三人のアンバサダー
ありましたよ!どっちつかずの・・・いや、どちらにも当てはまる人種が。それがステージ2で紹介されている、3人のアンバサダーである。
- エリートスーパーマン:
天才と秀才の橋渡し。創造性もあり、再現性もある。クリエイティブでロジックも強い。
- 最強の実行者:
秀才と凡人の橋渡し。再現性と共感性を武器に持つ。つまり、ロジックも強くて、人の気持ちもわかる。まさにどの会社にもいる「エース」。
- 病める天才:
天才と凡人の橋渡し。創造性と共感性を武器に持つ。クリエイティブなだけでなく、それが世の中の人々の心を動かすか? インサイト(潜在的な欲求)に届くかどうか? まで直感的に分かる。
うーん、しいて言えば、私はこの中では「病める天才」だろうか。天才かどうかは別として、病んでるのは事実だし(ハハハ)。「病める病人」ならピッタリなんだけど(笑)
7種類の主語の違い
そして天才・秀才・凡人は、それぞれの使用する主語の違いで、全部で7種類に分けられる。
|
タイプ |
主語 |
---|---|---|
凡人
|
I |
自分 |
Y(You) |
相手 |
|
W(We) |
家族や仲間 |
|
秀才 |
K(Knowledge) |
知識 |
R(Right or Wrong) |
善悪 |
|
天才 |
X(存在) |
世界は何でできているか |
Y(認識) |
人々は世界をどう認識するか |
なるほど、凡人<秀才<天才の順に、主語のスケールがでかくなっていくというわけだ。
才能を発揮するには、3つのステージが
才能を活かすには、3つのステージが必要。それぞれ説明すると・・・
ステージ1:自分の才能を理解し、活かす
「自分に配られたカードを知ること」、そして「自分に配られたカードの使い方を知ること」が必要。
「天才に生まれたかった」とか、「秀才になりたかった」などと考えるのは、時間のムダ。そして自分の手札を確認し、それをどう組み合わせて、どう繰り出すかを考える。とにかく、カードを出し続けて勝負し続けることが大事!
ステージ2:相反する才能の力学を理解し、活用する
種類の異なる相手との橋渡しをしてくれるのが、アンバサダーである。アンバサダーを説得するためのキラーフレーズは「あなたならどうする?」である。「相手の発言」を出来るだけ多く使用するのが効果的。
ステージ3:武器を選び抜き、リミッターを外す。
才能×武器の使い方をマスター。
創造性と相性のいい武器:
アート、起業、エンジニアリング、文学、音楽、エンターテインメント
再現性と相性のいい武器:
サイエンス、組織、ルール、マネジメント、数学、編集、書面、法律
共感性と相性のいい武器:
才能と武器、それぞれを適切に使うことで、「世の中が認知できる成果」となる。
誰の中にも天才はいる
誰の中にも、天才:秀才:凡人が様々な比率で存在する。
よって「誰の中にも天才はいる」と言える。
自分の中の「秀才」や「凡人」が「天才」を殺さないよう、育てることが大事!
総評
図や絵などを多用し、体系立てられた理論が、とても分かりやすくすっきりと説明されている。
また今回このようなストーリー形式を選んだ作者の意図は、「実際のビジネスシーンに落とし込むことで、三つの才能がどう活かされているかをイメージできるようにした」ことと、才能の種類を三つだけに分けることで、「才能をできるだけシンプルに伝えること」だそうである。
そして実際にこれは功を奏しているように思う。まずストーリー形式になっていることで、具体的なシーンや人物像が想像しやすくなっている。それから、たしかに私も「16パーソナリティー分析」などをやったことはあるが、性格そのものは自分に当てはまっているように思えるものの、どうすればそれがビジネスや生活の場面で活かせるかに関してのアドバイスに関しては弱い気がした。
そしてこの場を借りて、私が最初に述べた、「自分を天才と思い込んでいる、意識高い系」という言葉は撤回したいと思う。というのも、作者の結論では、「天才は誰の中にでもいる」とのことだからである。たしかに「人よりずば抜けて秀でた天才」というのは、あまり見かけないが、「天才の要素」なら、どの人にも多少なりともあると思う。すなわち、私もあなたもある意味「天才」なのである。「自分の中の天才」を殺さないようにするべき、という意見には、目からうろこだった。
そして日本の社会では、天才が育ちにくいという意見には、真に同意する。この社会では、天才だけに限らず、平均的な才能が求められ、多数決によって決められた、右へ倣えという価値観がもてはやされ、突出した個性や才能は潰されてしまいがちだ。
しかしこの本の読者がそれほど多いということは、それだけこの本の趣旨に共感している人も多いと言えると思う。そんな人たちの中から、イノベーションや変革が生まれ、よりよい社会になっていったらいいなと思った。
そして自称「病める天才」で孤独癖のある私も、才能の開花を支援してくれる、「共感の神」を本気で探そうと思ったのであった。
Written by ユカ@コーヒー